
研究室|革の百科事典
ヌメ革の経年変化とは
「育つ」を、感覚だけで終わらせないために
ヌメ革が「育つ」と言われるのは、色と艶、手触りが時間とともに変わるから。
ただし変化は、素材だけで決まるものではなく、光・空気・摩擦・水分・皮脂など環境と使い方の影響が大きい。
このページでは、経年変化をやさしい科学として整理します。
目次(クリックで開きます)
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経年変化で起きること(結論)
ヌメ革の経年変化は、主にこの3つ
- 色:明るいヌメ色 → 飴色 → 深い茶へ(速度は環境で変わる)
- 艶:触れる・擦れる場所ほど艶が立ちやすい
- 手触り:使い方に応じて、張り感・しなやかさの印象が変わる
※「必ずこうなる」ではなく、「なりやすい傾向」です。
色が濃くなる理由(光・空気・酸化)
ヌメ革の色が深まる背景には、光(紫外線を含む)や空気に触れることで起きる変化が関わります。
一般に「日焼け」と呼ばれる現象は、光の影響だけでなく、空気や温湿度など複数の要因が重なって進みます。
“色が育つ”を早める要素(傾向)
- 光に当たる時間が長い
- 空気に触れる(密閉より開放)
- 手に触れる機会が多い(皮脂や摩擦の影響)
※革の仕上げ(表面処理)や個体差で、進み方は変わります。
艶が出る理由(摩擦と圧)
艶は、使う場所によって出方が変わります。
触る・擦れる・押さえられる——そういった摩擦と圧が繰り返される場所ほど、艶が立ちやすい傾向があります。
よく艶が出る場所
手が触れる面/ポケットに入る外装/ベルトが当たる箇所など
艶が出にくい場所
触れない裏面/常に影になる面/摩擦が少ない箇所など
水とシミ(起き方の整理)
ヌメ革は水分の影響を受けやすい傾向があります。
水滴が「シミ」になるかどうかは、革の仕上げ、油分の状態、乾き方、温湿度などの条件に左右されます。
水が当たったときに起きやすいこと(一般的な傾向)
- 水滴の輪郭が残る(乾きムラ)
- 色が一時的に濃く見える(乾くと戻る場合もある)
- 油分の状態や乾燥で、跡が定着することがある
※ここは“白黒つける”より、「そういう素材」と理解した方が事故が減ります。
育ちやすい使い方/育ちにくい使い方
| 育ちやすい(傾向) | 日常的に使う/手で触れる/同じ場所に入れる(摩擦・圧が一定) |
|---|---|
| 育ちにくい(傾向) | 保管中心/密閉保管が長い/摩擦が少ない |
| 差が出やすい条件 | 屋外と屋内の比率/季節(乾燥・湿度)/雨との遭遇頻度 |
※“育ちにくい=悪い”ではありません。変化のスピードが違うだけで、使い方に正解はありません。
まとめ(チェックリスト)
経年変化を“気持ちよく”迎えるために
- 変化は素材+環境+使い方で決まる(比較はほどほどに)
- 艶は触れる場所から育つ(道具として使うのがいちばん)
- 水は“跡が残る可能性”を前提にする(驚かない)
※このページは素材理解のための解説です。作品の紹介は、研究室の方針として最小限に留めています。