研究室|革の百科事典
革の繊維構造とは
層・束・方向性で理解する(“強さ”と“しなやかさ”の骨格)
革の“手触り”や“腰”は、素材名だけで決まりません。
正体は、コラーゲン繊維がつくる束と網、そして銀面(表)から床面(裏)へ続く層です。
このページでは、その構造を「仕組み」として整理します。
※ここは商品紹介ではなく、素材理解のためのページです。
目次(クリックで開きます)
- まず結論:革は「層」と「繊維束の網」でできている
- 階層構造:繊維 → 繊維束 → ネットワーク
- 層構造:銀面側/内側/床面側で性格が変わる
- 方向性:繊維束の“向き”が、伸び方・裂け方を変える
- 動物種の整理:牛・豚・鹿・馬(コードバン)
- 実用メモ:繊維構造を知ると何が変わるか
- 研究室の注意書き
※各セクション末尾の「目次へ戻る」から戻れます。
まず結論:革は「層」と「繊維束の網」でできている
最初に押さえるポイント(研究室の整理)
- 革の主役はコラーゲン。繊維が集まり、束になり、立体的な網をつくる。
- 銀面(表)〜床面(裏)で、繊維束の密度や太さが変わる(層構造)。
- 束の向き(方向性)が、伸び方・裂け方のクセとして現れる。
※「強い」「柔らかい」などの言葉は便利ですが、要因が混ざりやすい。
研究室では、まず構造に分解してから考えます。
階層構造:繊維 → 繊維束 → ネットワーク
研究室における整理(定義を先に固定)
革の繊維構造=コラーゲン繊維が「束」をつくり、束が交差して「網」をつくる構造 ※“束(bundle)”“網(network)”は、断面観察や説明で使いやすい整理語として置きます。
※実際の強度や感触は、なめし・仕上げ・厚み・部位差で変わります。
なぜ「束」と「網」で見るのか
革は、均一な板ではありません。
細い繊維が束になり、その束が交差して立体的な“網目”になります。
この網目の締まり方が、腰・粘り・裂けにくさの理解に役立ちます。
層構造:銀面側/内側/床面側で性格が変わる
同じ革でも、断面のどこを見ているかで“見え方”は変わります。
研究室では、まず銀面側(表)と床面側(裏)の差を、層として整理します。
| 銀面側(表) | 比較的、繊維束が細かく密に見えやすい領域。 きめ(表情)や“締まり感”の説明に使われやすい。 |
|---|---|
| 内側(中層) | 束の太さが変化し、交差が立体的に見えやすい領域。 “腰”や“粘り”の背景を語るときに便利。 |
| 床面側(裏) | 起毛(毛羽)として見えることが多い領域。 ただし床面の表情は、加工(仕上げ)や研磨でも変わる。 |
このページでは“断面の層”として整理します。
方向性:繊維束の“向き”が、伸び方・裂け方を変える
研究室における要点
- 革には、繊維束の走り方に“方向性”がある。
- 方向性の揃い方で、伸び方・裂け方のクセが変わる。
- 素材名の比較より先に、「向きのある素材」として扱うと、迷いが減る。
裁断(取り都合)や、使う部位によっても結果が変わるため、
研究室では「種の差」ではなく、まず構造に“向き”があるという前提を置きます。
動物種の整理:牛・豚・鹿・馬(コードバン)
動物種の違いは、感触ではなく、皮膚組織(革の母体)の構造差として整理できます。
ここでは、繊維束の密度、毛包(毛穴の筒)構造、層の構成という観察可能な要素に限定します。
構造として比較できる主な要素
- 銀面側の繊維束の密度(表層の締まり)
- 真皮(革の主体)中の繊維束の太さと配列
- 毛包(毛穴)の大きさと分布
- 特定層の有無(層構成の違い)
牛(カウハイド)
真皮は三次元的なコラーゲン繊維ネットワークで構成されます。銀面側では繊維束が比較的細かく密に配列し、深部に向かって束は太くなります。銀面→中層→床面側へ、束の状態が段階的に変化する層構造が観察できます。
豚(ピッグスキン)
毛包(毛穴の筒)が発達し、表面に孔として現れやすい構造を持ちます。毛包の分布が特徴として残るため、表面では孔の並びが見え、断面では毛包周囲に組織の違いが現れます。
鹿(ディアスキン)
真皮のコラーゲン繊維束は比較的細く、立体的に絡み合う配列を示します。そのため、層構造はあるが、繊維束が細かく立体的に絡み、柔軟性が出やすい傾向があります。
馬(コードバン|馬の臀部特定層)
コードバンは、臀部に存在する高密度のコラーゲン線維層(シェル層)を加工対象とします。この層は繊維束が極めて緻密に集積した構造を持ち、一般的な革で見られる層のグラデーションとは異なる“層構成”になります。艶や密度感の印象は、このシェル層の構造に由来します。
※一般的な馬革(真皮全体を用いる革)とは構造上の分類が異なり、特定層が選択的に抽出される素材です。
※同一種でも部位・年齢・なめし方法により組織構造は変化します。ここでは種ごとの一般的な組織傾向として整理しています。
実用メモ:繊維構造を知ると何が変わるか
“感覚”を、言葉で崩さないために
- 触感の言語化:「柔らかい」ではなく「束が細い/網が締まる」など、要因に分けられる。
- 経年の理解:色や艶だけでなく、表面の締まりや馴染みを“構造の変化”として捉えられる。
- 素材比較の軸:素材名ではなく、用途に対して“どの構造が効くか”で考えられる。
研究室の注意書き
革は、同じ動物種でも部位が違えば性格が変わります。また、なめし・加脂・仕上げ・厚み・乾燥状態で、構造の見え方も変わります。
※このページは素材理解のための解説です。作品の紹介は、研究室の方針として最小限に留めています。
